AIで変わる司法書士実務|研修講義をスライド31枚でたどる
司法書士向け研修の一部を記事にして記載しています。
導入
この研修で目指したこと
第一部の講義パートを、当日のスライド31枚に沿って記録しました。各スライドの右側は、その場で話した内容の要約です。デモは、動画をまとめた記事の該当箇所にリンクしています。
AIで変わる司法書士実務

第一部の講義のテーマは、AIで司法書士の実務がどう変わるか。
自己紹介

講師はエンジニア出身。士業事務所のDX推進として、現場に入ってIT化を進める仕事をしている。
まず見ていただきたい未来像

目指すのは、指示を出さなくてもAIが先回りして仕事を進めている状態。ただし一度で当たることは少なく、指示を書き直す往復が続く。その往復を速く、負担なく回せるかが要点。
AIとの関わり方

AIとの関わりは4段階。多くの人は、毎回、資料を探して説明して指示を書く段階で止まる。まず1業務だけでも、同じ指示を書き直さずに済む段階へ上げるのがこの研修の目標地点。
研修の目標

先回りして動く仕組みは、難しそうに見えて構造は単純。ただし仕組みが単純なことと、実現が簡単なことは別。
今日の進み方

前半90分は、AI単体の機能、アウトプットの品質を固定する方法、勝手に動かすデモの順に進む。後半は弁護士による現場での活用事例。
SECTION 01
AIの機能を単体で使う
まずは、AIを安全に使い、基本操作を理解する

AIを単体で使うときの基本操作と、安全に使うための前提を扱う。
主なAIツール一覧

初心者向けはMicrosoft CopilotとGemini。初心者向けとは自由度が低く、できることが少ない代わりに安全という意味。高度なことをするほど自由度の高いツールが要るが、そのぶん使い方を自分で設計する必要が出る。
セキュリティについて

AIを使わないという選択が現実的でなくなってきている以上、使い方ごとにリスクと対策を押さえるほうが実際的。
安全な使い方とは

大前提は、入力が学習に使われない設定にすることと、そもそも必要のない情報を渡さないこと。AIに限らず、外部サービスを使うときと同じ考え方。
おすすめ

まずはCopilotかGemini。物足りなくなったらClaude CoworkやChatGPT Work。さらに上はClaude CodeやChatGPT Codexなどで、ここまで来るとPCの操作をほぼ自動化できる。
Demo 1|PowerPoint・Excelへの書き込み

ExcelやPowerPointの操作はAIでできる。情報を渡すと、スライドを作り、表の形に整理する。
AIの「記憶」と効率的な運用

AIの記憶は、ファイルに書き出された文章にすぎない。チャットを続けると情報が溜まって精度が落ちるので、良い結果が出た時点でWordやExcelに書き出す。次のチャットでそれを貼れば、前回の続きから始められる。
SECTION 02
細かな指示なしで一定品質の下書きを出すには
必要な情報を抽出し、決められた形式へ書き込む

細かく指示しなくても、一定の品質の下書きが出る状態をどう作るかを扱う。
AIを具体的なイメージに落とし込む

AIは、優秀だが社会人経験のない新人と考える。作業マニュアルを渡せば必ずその手順どおりに動く。判断基準まで渡せば、ある程度は自分で進められる。
新人に自由に動いてほしくない

新人と同じで、まず必要なツールへのアクセスと案件の情報を揃える必要がある。ここは人もAIも変わらない。
生成AIとは

生成AIは新しい文章や画像を作るAIだが、司法書士の業務では自由に生成されては困る。決まったルールに沿わせる要がテンプレートで、そこへ確実に書き込めれば実用になる。
Demo 2|テンプレートへの書き込み

テンプレートは、AIにかける制約を形にしたもの。WordとExcelは問題なくでき、デモでは難易度の高いPDFへの入力で確認した。ログイン後の画面を操作してテンプレートを取得する様子も扱う。
SECTION 03
AIのアウトプットを固定する方法
「新人向けの手順書」を作り、作業前に参照させる

一度出せた品質を毎回再現する方法を扱う。良い結果が出たら業務マニュアルにして、作業の前に毎回AIへ参照させる。
Demo 3|Gems/Skillsを作る

作るのはスキルズ、つまりAIが参照する業務マニュアル。これで同じ指示を書き直さずに済む。大事なのは、スキルズへ反映する作業にストレスがないこと。GeminiのGemsは、名前・説明・指示を画面から登録する手間がかかるのでおすすめしない。うまくいった直後に「今の指示を覚えておいて」と頼むだけで更新できる方が良いので、スキルズを使う。
SECTION 04
AIが勝手に動くようにする
ツールと情報をつなぎ、進められる仕事を先回りする

AIが勝手に動く状態をどう作るかと、その前提となるAIエージェントの仕組みを扱う。
AI Agentの仕組み

今の主流は、チャットで答えるAIではなく実際に作業するAI。性能の上がったモデルが脳にあたり、連携ツールの操作が手足にあたる。エージェント全体の精度は、この手足の精度で決まる。
普段使っているツール

連絡はLINE、ファイルはGoogleドライブやSharePointやローカル、文書はWordやGoogleドキュメントなど、使うツールは事務所ごとにばらばら。全部つながれば理想だが、LINEのようにつなげないものもあり、制約は必ず残る。
発展的な用語|APIとMCP

ツールとAIをつなぐ技術。従来からあるのがAPIで、最近の接続方法がMCP。ここは単語だけ知っていれば足りる。
Demo 4|朝起きたら仕事が進んでいる状態

議事録から2つのタスクを読み取らせると、AIは自分にできないものを外し、請求書の下書きだけを進める。連携の設定と、スマホから間違いを直す様子も扱う。
SECTION 05
司法書士の業務を全てAI化する際の壁
情報アクセス・ツール操作・判断の限界を整理する

どこまでがAIでできて、どこからが難しいのかを整理する。テンプレート系のように相性のよい業務がある一方で、厳しい業務もある。
AI化する際の3つの壁

壁は3つ。1つ目はセキュリティで、議事録ひとつとっても渡せるものと渡せないものがある。2つ目はツール連携で、LINEのように自動での連携が難しいものがある。ただしこれは将来なくなりうる壁。3つ目は物理的な手続きで、裁判所に持参するような仕事は、手続きの側が変わらない限り残る。
業務を全てマニュアル化できるか

条件分岐が多いだけでルールに落とせる判断は、AIが得意。誰か1人が業務マニュアルに起こせば全員で使え、最終的には同じマニュアルに収束する。一方で、絶妙な判断は人に残る。
SECTION 06
発展編:情報の発信と遠い?未来
工数削減を超え、法律実務の価値を分かりやすく伝える

ここからは工数削減を離れて、情報発信の分野でのAIの使い方を扱う。
Demo 5|情報発信・SNSへの投稿

SNSへの投稿のような情報発信も、AIが得意な分野。スケジューラーからBufferに下書きを作るまでを扱う。
司法書士の遠い?未来像

さらに進むと、AIが仕事を取ってくる未来もありうる。ただしSNSの投稿ひとつでも高い品質には人の指示がいるので、結局は先に業務マニュアルを固める作業が必要になる。

